その手をつかんで
蓮斗さんは苦笑する。


「コンビニはよく利用するよ。いろんな物が揃っていて便利だからね」

「大学生の時、瑠奈のコンビニ初体験に付き合ったんですが、蓮斗さんも大学生の時が初でした?」

「俺は、高校生の時だったよ。うちの父が、瑠奈には外の世界に触れないよう大切にするあまり外出制限していたけどね。外には汚いものが多いから、きれいな物だけを見せておきたかったみたい。でも、俺にはそういう世界もあることを知るようにと言った。将来のためにも経験しろってね」


蓮斗さんの話になるほどとうなずいた。瑠奈を箱入り娘にしたかったのだろう。

でも、瑠奈はその箱から顔を出したのだ。


「瑠奈はどんなものでも新鮮に捉えていたけど、私はいいのかなと心配になったこともあります。蓮斗さんのお父さんが言うように、きれいなものだけを見るほうが良いのではないかなと……」


私の言葉を蓮斗さんは「違う」と否定。


「瑠奈は自分の意志を通して行った大学での生活を、とても楽しんでいたよ。明日花との出会いも喜んでいて、こんな私を知っても変わることなく友だちでいてくれるから、好きだって。俺も今日話して、好きだと思った」  
< 35 / 180 >

この作品をシェア

pagetop