それから数週間後、一緒に過ごすはずだったクリスマスの日がやってきた。ぎりぎりまで仕事に追われ、現実を考える余裕がなかったことはありがたい。それでも仕事帰りすれ違う幸せそうなカップルや家族を見ていると、心がチクリと痛んだ。

あれから何度か渚さんから電話があったが、それに出ることはなかった。そのうち連絡もこなくなり、それに虚しさを感じるのはどこかでなにかを期待していたからだろうか。

欲しいものは必ず手に入れると、強引にでも私を迎えに来てくれるとどこかで思っていたからだろうか。

手放したのは私の方なのに。未練で埋め尽くされた私の心は、沈みかかった船のように不安定な毎日を生きていた。突然色を失った世界は、私にとってあまりに残酷だ。

優しい王子様はもう二度と私の前で微笑むことはないし、迎えには来ない。

「ちゃんと食べてるの?」

「うーん。あんまり最近は食欲がなくて。食べても身体が受け付けないんだよね」

「ちゃんと食べなきゃだめじゃない。凛子の仕事は体力必要なんだからちゃんと食べないと」

「そうだね。食べるようにするよ」

「まったく。手のかかる子だこと。そんなことだと思って凛子が好きなメープルドーナッツと参鶏湯スープとオムライス持ってきたの。一緒に食べよう?」

渚さんと別れてから元気がない私を心配して、美紅がこうやって私のもとを訪ねてくるのは何度目だろうか。美紅の存在はとてもありがたい。