別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「ありがとうね」

「困ったときはお互いさまでしょう?」

机の上に食べ物を並べだした美紅がニコリと笑う。机の上には私の好物が所狭しと並べられていく。

「まずはスープを飲んで胃を温めてから、次にメープルドーナッツね」

皿に置かれたドーナッツから甘いメープルの匂いが漂ってきた。

いい匂い……ん?
あれ?

次の瞬間、身体に感じた異変に思わず口元を押さる。

「凛子? どうしたの?」

私の異変に気付いた美紅が手止めて心配そうに私の顔を覗く。大丈夫だとすぐにでも答えたいのに、あまりの気持ち悪さに言葉を発することができなくて、立ちあがりトイレへと駆け込んだ。

そのまましばらく吐き気が収まらなくて、その場を離れることが出来なかった。

「凛子? 大丈夫?」

「ごめん。なんか気持ち悪くなっちゃって……。疲れが溜まってるのかな」

数分後、やっとトイレから出てきた私にすかさず美紅がミネラルウォーターのペットボトルを手渡してくれて、吐きすぎて乾ききった喉を潤そうと水を口に含んだ。

「凛子……あのさ、間違いならいいんだけど」

「ん?」

「妊娠してるとか……じゃないよね?」

美紅のその言葉にドクンと心臓が跳ねた。
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