【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
プロローグ
朝八時過ぎ、一歳の息子の泉を連れて、しがない母子に不釣り合いな超高級レジデンスを出る。

途端に泉がぐずり始め、私は抱っこであやしながら職場への道を急いだ。一ヶ月前、やっと見つけた仕事だったから、絶対に遅れたくはない。

とはいえ私が勤めているオフィスビルは、レジデンスから見えるくらい近距離にあり、通常なら徒歩十分もあれば着く。

オフィスビルは五十八階建てで、下階からライフサービスゾーン、オフィスゾーンとなっており、さらにその上階にはホテルや高級レストラン、会員制ⅤIPバー、ⅤIPラウンジ、展望台があり、屋上にはヘリポートが設置されている。私は高層階に位置するホテルの客室清掃員として働いていた。

ここ、ベリーヒルズビレッジは、そのオフィスビルやレジデンス、総合病院、ショッピングモールから成り立つ複合タウンだ。

ビルとモールは地下鉄の駅に直結していて、外に出ることなく都心にアクセスでき、上流志向なサービスや品物が揃う、煌びやかで優雅なセレブの街として有名だった。

そしてここに住めるのは、ほんの一握りの選ばれた人たちだけで、分不相応な私はいつもいたたまれなさを感じながら生活していた。

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