翠玉の監察医 法のあり方
三 蘭の思い
蘭と圭介はすぐに法医学研究所に帰り、解剖を反対されたということを碧子たちに報告する。解剖を反対されるのは初めてで、圭介はまだ戸惑っていた。しかし、蘭は淡々と事実を伝えていく。

「反対されてしまったのね……」

話が終わった後、碧子がポツリと呟く。アーサーも「反対する人もいるよなぁ」と諦めたような顔だった。

「私たちの国だと解剖って普通だけど、日本では解剖は少ないもの。偏見を持っている人がいても不思議なことじゃないわ」

ゼルダが納得のいかない顔をしている圭介に言う。マルティンが碧子に「それで、これからどうするんですか?」と訊ねる。解剖を遺族が反対する限り、蘭たちは動くことができない。

「とりあえず、私たちは桜庭さんのご家族が解剖に賛成してくれるのを待つしかありません桜木刑事の捜査状況によって、どう行動すればいいかは変わってきます。私たちは依頼の入っている解剖をして連絡を待ちましょう」
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