翠玉の監察医 法のあり方
感情的な朱莉に対し、蘭は淡々と「違います」と返す。

「私たちがご遺体を解剖する際に使用するのは、刃物ではなくメスです」

「一緒よ!!お母さんの体に傷をつけるんでしょ!?こんなに……こんなに……ボロボロにされたのに!!」

泣きながら怒る朱莉に対し、透が「朱莉、気持ちはわかるけど少し落ち着こう」と声をかける。そして朱莉に触れようとしたが、その手はあっけなく振り払われた。

「気持ちがわかるなら、何でお父さんは解剖に賛成するの!?お母さんをこれ以上傷付けないで!!」

朱莉はまた声を上げて泣き出し、透はどうしたらいいのかわからないといった顔をしている。圭介も戸惑っていた。そんな中、蘭だけが無表情で落ち着いている。

「解剖に関して、お嬢様としっかりお話ししてください。そしてまたこちらにご連絡ください」

蘭は透に世界法医学研究所の電話番号が書かれた紙を手渡し、圭介に「行きましょう」と声をかけて安置所を出る。

圭介が黙って後ろをついてくる中、蘭はエメラルドのブローチを握り締めた。
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