カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

今回は肩に手は置かれず、なぜか待たされている。はやく、キスしてほしい。恥ずかしいのを我慢して誘っているのに。

どうしたんだろう。目を泳がせたり、なにか言いたげだったり、彼は少し迷っているように見える。
迷わずしてくれた昨日とは少し様子が違う。

しかしついに観念したのか、隼世さんの手が私の手を握り返し、体も近づいてきた。

「……菜々花さん」

熱っぽい表情で見つめられて名前がつぶやかれると、私もやっと目を閉じ、落とされるキスを受け入れる。

「ん……」

押し当てているものの触れるだけで、先ほどの映画のシーンを目にしたせいか物足りなく感じる。
興奮しているのと、彼の態度が昨日と違って焦っている気持ちがあり、私は早くステップを踏まなければと自分を急かしていた。

思いきって角度を変え、唇を開いてみる。

ところが深いキスをしようと誘ったつもりだったのに、彼は私の肩を押し返して体を離し、なぜか「ごめん」とつぶやいた。
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