かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました



「ね、お願い、相沢さん。ランチおごるから」

朝、着替えを済ませて更衣室を出た途端、ほとんど話したこともないような女性行員に声をかけられた。
話があると言われ連れられるまま目立たない場所まで行くと、女性行員が顔の前で両手を合わせる。

「私を桐島さんに紹介して! お願い」
「……はい?」
「私、融資部の緒方っていうんだけど、前から桐島さんに憧れてたの。でも、企業リサーチ部門って仕事の関わりもないしエリートの集まりで敷居が高いじゃない? だからなかなか話す機会がなくて。ほら、会話もしたことのない女性行員にいきなり話しかけられても困るだろうし。だから、ね?」

顔の前で手を合わせたまま、コテンと首を傾げて見つめてくる緒方さんに圧倒される。

少しあざとく見える仕草は男性相手なら効果的だろうけれど、私相手にそんな必殺技を繰り出されても反応に困る。

「あの、私ともきちんと話すの初めてですよね」

私が困るとは思わなかったのだろうか……と思いながら聞くと、緒方さんが笑う。

歳は私よりも少し上に見え、整った顔にはしっかりとメイクが施されている。
茶色く染めた髪は胸の長さ。清楚な雰囲気と綺麗な笑顔はアナウンサーを連想させた。


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