翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

突然の事態に酸欠を起こしそうになりながら、ゆっくり斜め上を見上げたらすぐそこに翔ちゃんの綺麗な横顔があった。


濡れた黒髪からしたたる雫が私の首筋に落ちて、声が上がりそうになるのを手をグーにしてこらえた。


「鞄は胸の前で抱えて」

「え?あぁ、うん」


なんだろう、これ。
なんかの儀式なんだろうか。
こわごわと、おへそのあたりで鞄を抱いた。


翔ちゃんが視線を落として、目と目が合う。先生の厳しい目みたい。


空いている方の手が、私の鞄を支えてくれた。鞄のポジションが間違っていたらしい。先生、細かいよ。


向こう側から、私達と同じように濡れた男子校の生徒がキャッキャと群れながらこっちへ歩いてきた。
当たり前だけど、やっぱみんなビショビショ。


翔ちゃんは鞄を抱いてモタモタ歩く私を、その時ほとんど両腕で抱きしめてた。


男の子達に冷やかされるんじゃないかって少し不安になる。それなのに翔ちゃんの力は弱まるどころか、どんどん強くなっていった。
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