翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「翔ちゃん、雨!雨降ってるよ!」
放課後、急いで翔ちゃんのクラスに行き、廊下側の窓から思いきって声をかけた。
「知ってるし、声でかい」
それなのに、彼はなんだか浮かない顔。
なんでそんなにテンションが真逆?
でも、それくらいで私の心は折れないからね。
「これから一緒に帰れるよね?」
無愛想でもなんでもいい。
翔ちゃんと帰れるならそれだけでいい。
「美緒……俺今日傘持ってない」
「そんなの別にいらないけど」
思わず本音が出てしまった。
そう、重要なのは傘じゃない。
翔ちゃんと一緒に帰る。
これが何より重要。
それに濡れた髪は翔ちゃんが乾かしてくれるもん。
実は中学のときあんなに私を避けていた彼が、高校生になったら小学生の時のお母さんキャラにいきなり戻る……というミラクルが起きてしまったのだった。
それが嬉しすぎてあの頃みたいにまた甘えたいのもあるんだけど……今、翔ちゃんのこの態度を見て思った。
きっとそういうのはダメなんだ。
私たちもう高2だし。
それに最近の翔ちゃんは雨に濡れること自体を嫌がるようになった。
また面倒をみてやったものの、やっぱダルい……って思っているのかもしれない。
小さい頃は一緒にびしょびしょになってくれたのに。そう思うと、どこか寂しい。
「傘持ってるんなら一緒に帰ってもいいけど」
不意に問われて、返す言葉がみつからなくなったのは、翔ちゃんの冷たい声のせい。