明日、雪うさぎが泣いたら
雪鏡




『鬼ごっこはおしまいだね。もう帰らなくちゃ』

――しまいだ。


この声はどちらのものだろう。
私の頭で揺れているのは、どちらの夢なのか。
成長した私の迷いが伝わったのか、そこにいる小さな私も何も発することができないでいる。


『……っ、や』


ああ、まただ。
ふるふると首を振って、彼を困らせてばかり。


『あ、ほら』


あんまり必死になって嫌々するから、整えてもらったはずの髪はもうぐしゃぐしゃになっている。


『なくしちゃうよ? 』


お転婆の髪をよしよしと撫でながら、今にも落ちてしまいそうな髪飾りを留め直してくれる。


『……もっと早く伸びたらよかったのに』


子供なのは髪のせい。
彼に会った時点でもっと髪が長かったなら、きっと彼を引き留めることができたのに、なんて。


『短い髪も可愛いと思うけど』


ちょっと照れてはいるけれど、それでもそんなことを言ってのけるこの子は、今こうして見ても大人びて見える。
それが何だか悔しくて、子供の私は更に唇を尖らせるのだ。
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