翔んでアルミナリア
第5章/迷図 ——MAZE——
亀裂は細く長く、地面を途切れながら続いている。

少し進んで、人ひとりがやっとすり抜けられそうな幅の亀裂があった。

「この時間から洞窟に潜って、宝を探せるものでしょうか」
エストライヘル師が懸念を口にする。

あらゆる状況を想定した上での発言だろう。考えたくないけど、誰かが怪我などした場合、夜間では身動きがとれなくなってしまう。

が、「夜でなければならないのです。月の光が道を教えてくれます」とエレオノア姫はきっぱり答えた。

ならばこれから地下の洞窟へ降りていくのだ。燐光石をかざして覗きこんだところで、まるで見通しがきかない。
亀裂はうねって奥へ続いているようで、リュシウス帝の視力でもその先まで探るのは不可能だった。降りてみないと分からない、ということだ。

危険な先陣は、一番身体が軽い少年である蓮くんに託された、というと聞こえがいいけど、要は捨て駒にちょうどいいからだ。
そして蓮くんは、率先してその役割を引き受けた。役立たずでいるのは肩身がせまいので、彼の気持ちは理解できた。
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