たまには甘えていいんだよ
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午前10:00。いつもの時計広場で待ち合わせ。そう!今日は壱斗(イット)と久しぶりのデート!

ウキウキで私は待っていた。時計を見ると9:58。もうそろそろで壱斗くるかなぁ…



「おまたせ!ギリギリなってごめんな」


壱斗が手を振りながら小走りでやってきた。壱斗は私の自慢の彼氏!この辺では1番有名なT大学の教育学部生で、頭は良いし優しいしとっても包容力のある素敵な人。おまけに教員志望だから私の勉強も教えてくれるハイスペック彼氏なんです!!今日はそんな壱斗と久しぶりのデート&お泊まりなんだけど……


「壱斗、顔赤くない?大丈夫?」

心無しか疲れてるように見えるし、顔もほんのりと赤い。


「遅れちゃ行けないと思って走ったらバテちゃって!ほらあいりと違って歳だからさぁ。さ、今日のデート楽しもう!」


そういう壱斗の笑顔は少しぎこちなかったけど、せっかく1ヶ月ぶりのデートだし壱斗がそういうんだから楽しむことにした。

それからは映画を見たり、ランチをした後カフェでお話をしたりして時間は過ぎ、気がつけば午後4時を迎えていた。壱斗の様子が明らかにおかしいと気がついたのはそれからしばらくしてからだ。私が授業であったことや先生や友達の話をすると、いつもは笑顔で頷いて聞いてくれるのに、今日はどこか上の空で元気がない。

「壱斗、やっぱり無理してる?」

私がそう聞いても

「疲れて溜まってんだよ多分、あいりの話聞いて癒されてっから大丈夫、続けて?」

の一点張り。何だかんだで時間は過ぎ、壱斗の家に行く時間になった。

壱斗の家までは近いからと歩いていると…

「ハァ ハァ ハァ」

横を歩く壱斗の顔を見ると、苦しげな表情を浮かべている。端正な顔が赤く色づき、長いまつ毛から覗く瞳は潤んでいた。
…誰がどう見ても風邪だ。

「ほら壱斗!やっぱり体調悪いんじゃん!ずっと無理してたんでしょ…もっと早く言ってよ!」

私がそう言うと

「久しぶりのデートで風邪とかあいりに申し訳なさすぎんだろ…かっこわりぃし」

と苦しげに呟いた。熱に浮かされたその表情と少し汗ばんだ額。不謹慎にも色気があるなぁと思ってしまった。いつもは感じない男らしい部分が垣間見える。

「とりあえず早く壱斗の家行くよ!」

私はそう言い、壱斗を支えながら彼のマンションへ向かった。
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