獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
第三章

***

 翌朝、いつも通りの時間にパッチリと目が覚めた。
「うーん、よく寝たぁ~!」
 もともと寝覚めはいい方だが、今朝は特に頭がスッキリして気分も爽快だ。
 ……だけど私、いつの間に寝たんだっけ? ふいに疑問が脳裏を過ぎり、おもむろに目線を下げる。
「あれ? 私、着替えないで寝ちゃってたんだ」
 シャツの襟もとこそ緩めているが、ピッチリとした近習のお仕着せのまま眠っていたことに少し驚く。
 なんだってこのまま寝ちゃったんだっけ……? 考えてみても、思い出すことはできなかった。テラスで酒を酌み交わしながら昔話に花を咲かせるマクシミリアン様とガブリエル様を微笑ましく眺めていたのは覚えているが、その先の記憶がどうしてか曖昧だ。
「って、今はそれどころじゃないんだった! 今日はこれから朝市に行くんじゃないの!」
 おかしいと感じつつも今日のスケジュール変更に思い至れば、小さな違和感は目先の忙しさに押し流されて、意識の彼方に消えた。慌てて寝乱れて皺が寄った衣服を脱いで身支度を済ませると、マクシミリアン様の居室へと駆け出した。

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