君のブレスが切れるまで
 担任の先生から自分の名前が呼ばれている事に気づく。私は慌てて立ち上がり、「はい!」と声を上げた。


「ちゃんと聞いてたかー? 今、出席取ってるから、呼ばれたらすぐに返事をしろー」
「す、すみません……」


 私は背中に嫌な汗を感じながら着席する。どうやらクラスのみんなは笑ってくれているようだが、頭が真っ白になってしまい、そんな事を考える余裕もなかった。とても恥ずかしい、穴があったら入りたい。
 それにしても、登校初日だっていうのに名前までは呼ばないんだ……今は読むのに難しい名前が多いからだろうか? それともこの先生特有?
 その後も疑問は解決することなく出欠は続き、私と同じように何度か名字を呼ばれる人がいた。


宮城(みやぎ)宮城(みやぎ)!」
「……はい」


 あの子だ。彼女は窓に向けていた顔を正面に向けると、立ち上がり返事をする。

「呼ばれたらちゃんと返事しろー」
「はい」


 あの子、宮城(みやぎ)さんって言うんだ。なんて話しかけようか迷っていたから、ありがたい。
 それからクラス全員の出席を取り終えた後に、先生の長たらしい話が始まる。興味のない話というのはそれだけでも時間を長く感じるものだ。私はチラチラと宮城さんの方を見るが、ここからじゃ彼女は気づかない。どうしてこんなに気になるのか、入学式の日に話しかけられたから? それとも吸い込まれそうな真っ赤な眼に惹かれたから? ただ、なんとなく、気になる。
< 4 / 270 >

この作品をシェア

pagetop