政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
『信じてほしかった』
「家政婦、か」

 零士君から家政婦の提案をされてから三日後。彼を送り出したあとに家事をしながら、もう何度目のため息を漏らしただろうか。

 でも零士君にそう言われても仕方がないよね。最近の私はふとした瞬間に笹野さんと零士君のことを考えてしまい、失敗ばかりだったのだから。

 どうにか家政婦を雇わないことに納得してもらえたけれど、今のままではまた言われてしまいそう。

 私には社会経験もない。かといって笹野さんのように自分で企業しようなんて知識も勇気もない。

 そんな私が勝てるものといったら、彼を支えることくらい。それさえも奪われたら、私の存在意味がなくなってしまうもの。

 なにより零士君には嫌われたくない。もう二度とあんなつらくて悲しい想いはしたくないもの。

 零士君のことを好きだと実感するたびに、どうしても文也のことが脳裏に浮かぶ。

 人の気持ちは簡単に変わるもの。零士君だって例外じゃない。

 なにげないことで嫌われる可能性だってあるんだから。
< 160 / 225 >

この作品をシェア

pagetop