呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?

第3話



 それから二日後、シンシアは詩人の神官として帝国騎士団に同行することになった。数日間の任務になるのでリアンから散々心配され、付いてこようとされたがなんとか宥めて修道院を出てきた。


 朝の祈りを終わらせて教会を出ると、門の前にルーカスが立っていた。見送りに来てくれたようだ。

「魔物の討伐に参加すると聞きました。どうかくれぐれも気をつけて」
「ルーカスが一緒に来てくれたら良いのに……今回は一人だから心細い」

 シンシアは俯きがちになって弱音を吐く。

 ルーカスは神官ではあるがもともと武官を多く輩出するベドウィル伯爵家の人間だ。本人は剣の腕はないと言い張るが、精霊魔法だけでなく主流魔法も使えるので教会内の騎士の中では五指に入るほど強い。これまで何度も護衛をしてもらった。


 しょんぼりとしていると、ルーカスが頭を優しくぽんぽんと叩いて撫でてくれた。
 幼馴染みであり、兄のような存在のルーカスは昔からシンシアが落ち込むとこうやって慰めてくれた。物腰が柔らかい見た目とは裏腹に、その手は節くれ立って分厚い剣だこがある。何年も鍛練に励み、努力を重ねてきた彼の手がシンシアは好きだった。

「私はヨハル様から他の仕事を任されているから一緒には行けません。でも、仕事先から応援しているので頑張ってください」

 穏やかな笑顔から元気をもらったシンシアは目を細めてこっくりと頷く。

「ありがとう。お陰で頑張れる気がしてきたわ。ルーカスもお仕事頑張ってね。行ってきます」


 別れの挨拶を済ませた後、シンシアは帝国騎士団との待ち合わせ場所へと足を運んだ。

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