呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?

第7話



 ◇

 キーリに連れられて医務室へと足を運んだイザークが中に入ると、フレイアがカヴァスに叱られている最中だった。

「まったく。君という子はどうしてこうも無鉄砲なんだい? 強行突破で後宮に乗り込むし、妃候補の自覚だってない。普通侍女に扮して後宮を抜け出すかい?」
 フレイアはベッドの上で上体を起こし、しゅんと項垂れている。
「ごめんなさい。……自分が浅はかで軽率だったことは深くお詫びします」

 カヴァスは腕を組み、フレイアを咎めている。今回の件を重く見ているのだろう。

「自分の恋愛にのめり込み、あまつさえ陛下にまで迷惑をかけて、令嬢としての自覚も足りない。自分の家名がどれだけの影響を及ぼすのか分かっていたのかい?」
「フォーレ家のわたくしが動けば少しは他の令嬢を牽制でき、妃を娶るのを拒むイザークお兄様の時間稼ぎになるかと思ったのです。……本当にごめんなさい」

 声は次第に尻すぼみになり、俯くフレイアは肩を震わせた。
「いや、君の言い分も一理ある。あるけど……倒れたと聞いて兄は肝を冷やしたんだよ」

 小さく息を吐くカヴァスは逞しい腕で妹のフレイアを抱きしめる。
 カヴァスとフレイアは実の兄妹だ。叱ってはいるがカヴァスは心の底から妹を大事に想い、心配していることが窺えた。

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