呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
美しい兄妹愛を見せたところでフレイアがこちらの存在に気づく。イザークを見るとベッドから飛び出してスカートを摘まんで礼をした。
「陛下におかれましてはこの度の件で大変ご不快になられたことでしょう。謹んでお詫び申し上げます。差し出がましいことではありますが、ユフェ様はご無事でしょうか?」
「さきほど介抱してきた。数日休息を取れば元気に歩き回る」
フレイアは胸に手を当てて「良かったですわ」と呟くとまた涙を流す。
イザークはフレイアの手を取るとベッドに座るように促し、それからいつも通りに接するよう頼むと胸に手を当てて謝った。
「俺も悪いことをしたと思っている。フレイアの気持ちを知りながら……」
「いいえ、わたくしもお兄様が妃を一向に娶らないことや妃候補であることを逆手にとって乗り込んでしまいました」
「何か、埋め合わせすることはできないか?」
尋ねるとフレイアは顔を伏せてブランケットをきつく握り閉める。
「……お忙しいのは分かっています。構ってもらえないことも、会うことが無理だということも理解しています。でも、だからといって手紙の返事を一通も送ってくださらないのは酷いです。もう一ヶ月放置です! 残酷です、あんまりです!!」
とうとう嗚咽を漏らすフレイアに、イザークは眉尻を下げる。
続いて後ろに鋭い瞳を向けながら声を掛けた。
「――だ、そうだが。どういうことだキーリ?」
こちらには近寄らず、扉の前で待機していたキーリは気まずそうにさっと目を逸らす。