呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?

第3話



「往生際が悪い」

 イザークが人差し指をすうっと下から上へと移動させると動きに合わせて泉の水が球体となって宙に浮いた。それは瞬く間にルーカスの頭全体を覆う。
 ルーカスがもがいて水の球体を払おうとするが、すぐにもとの形に戻ってしまう。

「降伏しろ。その水は瘴気を含んでいて飲み込めば身体に影響を及ぼすぞ」

 イザークが静かに忠告するが水膜の向こうで、ルーカスは眉間に皺を寄せていた。ゴボゴボと空気を口から吐いているが降伏する素振りは一切ない。

 空気を奪われても息が続く限りは任務を遂行するという意志が伝わってくる。
 ルーカスは眦を決して短剣を構えた。

「駄目だよこれ以上悪いことしちゃ」

 俊敏な動きでシンシアとルーカスの間に入り込んだカヴァスは、ルーカスの手を捻り上げて短剣を地面に落とさせると、そのまま地面に叩き付ける。
 地面にたたき落とす寸でのところでイザークが球体を泉へと戻したお陰でルーカスは水を飲み込まずにすんだ。

< 188 / 219 >

この作品をシェア

pagetop