呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?

第4話



 厨房でご飯をもらってお腹を満たした後、宮殿内を探索することにした。ご飯を食べている間に、新人侍女が先輩に宮殿の内部についてあれこれ質問していたのだ。

(お陰で地道に調べる手間が省けたわ)
 運良く宮殿内の情報を入手でき、早速把握するために歩いている。


 この宮殿の造りは回廊式。道なりに進めば元の場所へと帰って来られる造りのはずだが、広大なためにそれは叶わない。
 引き返すか中庭の十字路もしくは対角線上に設けられた小道を進んで目的の場所へと向かうしかない。

 中庭の小道の間には植栽がなされ、四季折々の花や木で溢れている。また中央には噴水をあしらった水路があり、宮殿内の地下水路と繋がっている。
 噴水の周りにはベンチが設置されているので憩いの場となっていた。

 宮殿の一番奥に位置する場所は皇帝の居住エリアがあり、さらに皇帝の部屋の前を通らなければ辿り着けない場所――後宮がある。


 イザークには婚約者もいなければ好いている令嬢もいないらしい。
 強いて言うなら寵愛を一心に受けているのは猫のユフェだ。主のいない後宮を覗いてみるが、やはりそこは閑散としていた。

 それでも女官と呼ばれる妃を世話する女性たちは、いつでも迎えられるように現在もそこで働いているようだった。

(イザーク様は確か二十一歳のはず。そろそろ妃を迎え入れる時期だよね。現状、向いているベクトルが猫なのがおかしいけど。というか、あの方が人間相手にデレデレすることなんてあるのかな?)

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