昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 柔らかいその唇を指で軽くなぞると、凛から離れた。
 彼女に触れずにはいられないのは愛おしいから。
 認めるよ。
 俺は凛が好きなんだ。
 彼女をずっと俺のそばにおきたいと思う。
 部屋を出て玄関に戻ると、パーティで見かけた凛の姉が伊織と雑談していた。
「今度いらっしゃる時は是非コーヒーでも。凛の淹れるコーヒーはとっても美味しいんですの」
 見た目もしゃべりもお嬢さま育ちの彼女。
 伊織もこういうお嬢さまの相手は慣れたもので、にこやかに返す。
「凛さまは料理がお上手だそうですね。機会があれば是非」
「伊織。もう失礼するぞ」
 彼に声をかけると、「では、また」と凛の弟たちに挨拶して保科邸を後にする。
「また今度凛をうちに招待する。彼女の送迎を頼む」
 帰りの車で伊織に告げたら、彼は「かしこまりました」とにこやかに返事をした。

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