「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。
第3章
母が死んだ。

気が狂い、部屋から出て来なくなった母。

彼女の世話係が今朝がた見つけたのだ。

ベッドの上で吐瀉物にまみれて死んだ母の姿を。

死因は薬の過剰摂取。自殺だった。

理由が理由なので葬儀はひっそりと行われた。

父は帰ってこなかった。仕事で王都を離れているとかで母の葬儀に顔を出すこともしなかった。

可哀そうなお母様。あんな男の何がそんなに良かったと言うの。

「セイレーン」

葬儀にはルルーシュが出席してくれた。

ルルーシュは母と多少、面識があったのだ。だから出席してくれた。私とルルーシュと邸の使用人だけでひっそりと母を見送った。

母の両親、つまり私の祖父母に当たる彼らは来なかった。

自殺をするなど家の恥だと。泥を塗られたと憤っているらしい。

私の命令で母の死を伝えに行った使用人から聞いた。

「ルルーシュ、ありがとう。来てくれて」

「うん。そろそろ邸の中に戻ろう。日が暮れだした。」

「そうね」

上流貴族の夫人が亡くなったというのにとても質素で寂しいだけの葬儀はあっけなく終わった。

それから数日後のことだった。

父が一人の女性と少女を連れて邸に帰ってきた。

銀色の髪と目をした可愛らしい少女だ。少女は私の姿を見るなり嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。

「お久しぶりですわね、お父様。お母様の葬儀にも出られないほど忙しいと伺っておりましたが」

「そっちはひと段落着いた」

「そうですか」

私の嫌味をさらりと流した父は紹介しようと言って銀色の髪の少女に視線を向ける。

少女は父が口を開く前に「会いたかったわ、お姉様」と言って私に抱き着いて来た。

ぞわりと鳥肌が立ったのは生理的嫌悪の現われだったのかもしれないと後に思う。

私は無理やり少女を自分から引きはがした。

かなりの馬鹿力ね。引きはがす際に多少の抵抗を感じた。

離れたくないと縋りつく彼女の爪が腕に突き刺さった。

「私に妹はいませんわ」

私は当たり前のことを言っただけなのに少女はとても傷ついた顔をする。

「この子はライラ、今日からお前の妹だ」

ならば隣の女性はライラの母。つまり今日から私の母でもあるということ。

「っ」

冗談じゃないっ!

「お姉様、よろしくね」

そう言って無邪気に笑うライラを引っ叩いてやりたい衝動にかられた。もちろん堪えたけど。

「気分が悪いので部屋に戻ります」

私の態度が気に入らなかったのか険しい顔をした父を無視して私は部屋に戻った。

「お嬢様」

母によく仕えてくれた使用人の一人が心配そうに私を見る。私は彼女に「大丈夫よ」と答えて部屋に入った。

一人になりたかったので私の許可があるまで誰も入室しないように言っておいた。
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