目を開けるとそこはまた闇の世界だった。

 もう何度目だろうか。

 分かっていることなのに、いまだに慣れない。

「気がついたか」

 闇の中で声がする。

 誰かの腕を枕にして眠っていたらしい。

「ルクス……ですか」

「そうだ」と、闇が返事をした。

 すぐ目の前にいるはずなのに、何も見えない。

 そういえば……気を失ったんだった。

 最後に見たものを思い出すと、体が震え、鳥肌が立つ。

 エレナは手で彼の顔をなでて確かめてみた。

 鼻、頬、耳、少し汗ばんで濡れている髪。

 彼は人の姿に戻っているようだ。

「何をしている?」

 エレナは答えずに彼の髪に指を通していた。

 ルクスも彼女のするにまかせて、それ以上何も言わなかった。

 今は明かりはいらない。

 顔を見られたくなかった。

「泣いているのか」

 ……言わなくていいのに。

 顔を隠したくて体をひねろうとして、自分がまだ服を着ていることに気がつく。

「俺の寝床に入り込んで何をしようとした?」

 エレナは答えなかった。

 答えられなくて黙っていた。

 何をしたかったのか、自分でも分からない。

 ただ、そばにいたかった。

 一緒にいたかった。

 触れ合っていたかった。

 ただそれだけなのに。

 他に何があったというのだろうか。

 それをただ自分は知らないだけなのか。

 心の奥に冷たい滴がぽたりと垂れて波紋を広げる。

 もう体の火照りもなく、心は冷え切っていた。