私があなたを殺してあげる

 土曜日の夜、仕事を終えてからドラックストアに向かった。

「智明」

「あっ、杏子、いらっしゃい」

 今日も智明は笑顔で迎えてくれる。

 私は胸が痛む。けどその感情は隠して、私も笑顔で答える。


「あのさ、バイト終わったら家に来ない? 料理作ってん」

 私は手料理を作ったと智明を誘う。


「えっ? そうなん?」

「うん、けっこう自信作やで」

「そっか~ どうしようかなぁ~」

「明日は休みやろ? やったらおいでよ? 是非食べてほしいねん」

「そこまで言うんやったら、わかった。行かせてもらうわ」

「ほんまに? じゃあ、待ってるから」

「うん」

 私はビールとスパークリングワインを買うと、急いで家に戻り、料理の支度をする。


 料理を作ったというのは嘘。今から作るんだ。


「さぁ、腕によりをかけて作るぞ~ これが最後の料理になるかもしれんし」

 私は一生懸命、智明のために鳴れない料理を作った。



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