私があなたを殺してあげる
 午前5時過ぎ。智明がバイトを終えて帰って来た。

「おかえり」

 私は智明を玄関先で出迎える。まるで新婚のように。


「ただいま」

「さぁ、入って」

 私は智明を家の中に招き入れ、扉を閉めた。


「お腹空いた~ ん? なんかいい匂いがする」

「でしょ~? 肉じゃが作ってん」

「マジで? 俺めっちゃ好き」

「男の人は大体好き言うよな~」

 知らんけど。

「まぁ今やったら何でも美味しく食えるわ。休憩中も何も食わんかったから」

「ちょっと、その言い方、なんか酷くない?」

「ええから、早く食べさせて」

「もうっ・・・」

 私の手料理を、少しでも楽しみにしてくれていたということかな?


「いただきます」

 智明はとても豪快に肉じゃがを頬張る。


「うわぁ~めっちゃ美味い! 杏子、料理上手いんやな?」

「フフフッ、どうよ?」

「正直、料理できひんと思ってたわ」

 ズコッと、私は態勢を崩す。

「ちょっと、失礼とちゃう?」

「ごめんごめん、でもマジで美味い!」

 智明は私の作った料理をどんどん平らげていく、それは美味しそうな表情をして。


 自分が作った料理をこんなに美味しそうに食べてもらえる、見ているだけで幸せだ。

 この光景をずっと見ていたい、ずっとこんな時間を過ごしたい。

 ずっとこのまま、智明のそばで・・・ でも・・・




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