私があなたを殺してあげる
あなたのぶんまで生きる

「んん? あれ・・・?」

 私はゆっくりと目を開ける。

 白い壁にクリーム色のカーテン、ここはどうやら病室のようだ。


「目覚めたか?」

 そこには制服を着た女警察官が立っている。

 ここは警察病院の一室らしい。


「私は、何を・・・」

 頭がボーっとして状況を把握できなかったが、はっと我に返った。

「智明は?」

「彼なら大丈夫、生きている」

「生きてる・・・ そう・・・」


 智明を楽にさせてあげられなかったのか・・・


 なんだかホッとしたような、けど、智明を解放してあげられなかったことに胸は痛む。

 警察官の話によると、私も危ない状況だったらしい、しかしなんとか一命を取りとめたのだと。

「あなたに手紙だ」

「私に?」

 警官の人が、私に一通の手紙を手渡してくれた。なんとそれは、智明の母親からのものだった。


 手紙を開くと、まず一行目にこう書かれてあった。


『あなたに大変な辛い思いをさせたこと、本当に申し訳ありません』と。

 自分の息子を殺そうとした女に、何故こんなことを書く? 私は更に読み進める。


『あなたは智明のことを思って、そうしてくれたんですよね? 本当は私たち家族が、こうなる前に何とかしなければいけなかったんです。やさしい息子に甘えて、息子が苦しむ姿を見過ごして来た。だからあなたが智明を楽にしようとしてくれた。とても辛い思いを任せてしまって、本当に申し訳ありませんでした。それから智明のこと、気になっているでしょうからお伝えしておきます。智明は生きています、発見が早く、一命を取り止めたのです』


 その文を見て、私は涙が溢れ出た。

 殺して、楽にしてあげようとしていたのに、生きていると知ればうれしくて、涙がどんどんと込み上げてくる。


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