未来の種
仕事納めだった昨日、職場で年末の挨拶をして、そのまま新幹線に乗った。そして私は次兄の待つ東京へ向かったのだ。


私は藤田美衣子、25歳。私立聖堂館学園で幼稚園教諭をしている。聖堂館学園はカトリックミッションスクール。幼稚園から高校までの一貫教育で、関西では良家の子女が通う学校として人気が高い。私自身もこの学園の卒業生で、遡れば兄達や両親もこの学園の卒業生だ。
私は聖堂館学園高校を卒業後、系列の女子大へ上がり、幼稚園教諭の資格を取得した。そして今、母校である聖堂館学園幼稚園に勤めて3年目になる。

年の瀬も押し迫ったこの時期に、次兄の元を訪れるには訳がある。
2つ上の次兄昇平(しょうへい)は、現在医師3年目。地元の大学病院からの国内留学中で、現在東京に勤務している。専門は産婦人科。
実は、私の父も長兄も医師だ。父は聖堂館学園の正門前で、藤田子供クリニックを開業している。開業して25年。つまり、私が生まれた年に開業したのだ。そして長兄の鉄平もクリニックを継ぐべく、小児科医をしている。現在はまだ大学病院で修行中の身だ。
小児科医にはならず、産婦人科医になった次兄。そこには少なからず、私という存在が起因している。








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