未来の種
「美衣子、起きたのか?」

「うん。おはよう、昇ちゃん。」

「ちゃんと寝られたのか?」

「うん。よく寝たよ。このお布団、ふかふか〜。」

「ベッドで寝てよかったのに。」

「お布団もたまには寝てみたいじゃない。これ、きっと最高級の寝具だと思うわよ?」

本当にふかふかなのだ。
このタワマンは、昇平の勤務先の隣にある病院スタッフのための社宅だ。昇平は1年だけの家具家電付き間借りなので、下層階の1LDKだけれど、それでもすごく広い。上層階はとてつもなく広いらしい。

そして、ここでは忙しいドクターのための様々なサービスを受けられる。日々のハウスキーピングや、クリーニング、それに食事の用意まで。全てコンシェルジュがやってくれるらしい。
このお布団も、もちろんコンシェルジュが用意してくれたレンタルだ。

お布団は最高だった。
…でも、夢見が良くなかったことまではさすがに言えない。
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