未来の種
新学期が始まった。
毎日園児達に囲まれて、いつも通り賑やかな新年の始まりだった。
この仕事に就いて、本当に良かったと思う。私にはいつも可愛い子供達がいるんだもの。体が辛い時はあるけれど、子供達は私の最大の癒しだった。

2月に入ってすぐ、昇平からメールが届いた。体調を気遣う言葉と、添付されているURL。開いてみると、それはNY行きのチケットだった。それも、春休みに入ってすぐの日程で取られてある。
私はすぐに昇平に電話をかけた。

「昇ちゃん! これ、どういう事?」

「もう心配事は減ったはずだ。
一度会いに行ってこい。ちゃんと自分の気持ちを素直に話してみろ。優はきっと待ってるよ。」

そんなこと…わからないじゃない。
優が今どうしているのか、私には殆ど情報がない。
あるのは昨年の秋の世界的なコンクールで2位を取ったというネットの小さな記事だけだった。でも、地元のクラシックCDの売場では大きく取り上げられていて、私は何度も足を運んで、一枚ずつ、せっせとCDを購入し続けた。それだけだ。
頑張っているのだと思う。結果を出せているのだから、元気にしているのだろう。
私がした事は間違ってなかったんだよ。
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