今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます

折り返し地点となりましたわ

「なっ………そんなこと、あるはずがないだろう!お前が聖女だと!?でたらめを抜かすな!!」

「でたらめだと仰いますか。真実も確かめないで決めつけるとは、そこまで愚かだと思いませんでしたわ」

「なんだと………!?お前、もしやそれが素なのか!とんだ悪女だな!騙された俺やミレーヌに悪いとは思わないのか!」

「論点をすり替えないでくださいませ。ねえ、ミレーヌ。あなたはおかしいと思ったことがあったんじゃないの?聖女、聖女ともてはやされるわりに全く力が使えないことに悩んだことは?あなたは本来魔力適合がないと聞くわ。聖女としての力はおろか、魔力すら感じ取れないのではなくて?」

私に矛先を向けられたミレーヌは顔を青ざめさせていた。視線は下に落ちている。その手はすがるように王太子の服の裾を掴んでいた。

こんなに殊勝な態度をとってはいるものの、聖女てしての力に疑問を抱きながら聖女として君臨していたことに内心感服する。ミレーヌは知っていたはずだわ。自分に聖女としての力がなかったこと、そして、本当の聖女は私だということを。それを知りながら、さも知らないように振舞っていたのだから流石と言うべきか。

「ミレーヌをいじめるな!お前がそんな性悪な女だと知っていれば、婚約などしなかったものを………!」

「あら、殿下。ご存知ない?この婚約は私たちが生まれた時から結ばれているもののようですよ。つまり、私たちに拒否権はなかったのです」

そう言うと、王太子は憮然とした顔をした。あら、当たり前のことを言っただけなのに怒らせちゃったかしら。いやね、怒りの沸点が低い人って。話していて疲れるわ。しかもこんな阿呆だとなると、余計に疲れる。
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