今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます

聖女と呼ばれる所縁 ①

「お姉様!お姉様聞いて?私、聖女になったのよ!」

そうミレーヌが伝えてきたのは彼女が五歳の時の話だった。



ミレーヌは義妹だ。私とは半分しか血が繋がっていない。

私の母は公爵家の正妻で、そしてミレーヌの母は平民だった。公爵はミレーヌの母とは市井で偶然であったらしい。そこでふたりは一目惚れ。そうなると邪魔になってくるのは私の母親だ。第二夫人として娶られたミレーヌの母親は本邸に呼ばれ、私と母親は邪魔だと言わんばかりに別邸へと押しやられた。

母の口癖は『ごめんね、産んでしまって、ごめんなさい』だった。私はそれを聞く度に泣く母の顔が見たくなくて、懸命にその涙を拭っていた。だけど幼少期から見せられていれば影響もされるわけで、いつの日か私は母の涙がとても苦手になっていた。

『ごめんね、産んでしまってごめんなさい。ごめんね、許して…………ミレルダ』

確か、それが最期の言葉だった気がする。あの日、母はいつものように泣いていて、そして目が覚めた時にはもうこの世の人間ではなくなっていた。父と母は政略結婚だった。

だから愛など微塵もなかったのだ。ひっそりとした、忘れさられたような別宅と違い、本宅はいつも賑やかで栄えていた。

侍女は気まずいのか私たちの世話は最低限のものしかしなかったし、もししていなかったとしても公爵は何も言わなかったのだろう。

本当に愛する人を見つけて、公爵は母を、そしており良く生まれてしまった私を心の底から疎んでいるようだった。

そう思うと、恐らく彼らの初夜も酷いものだったのだろう、と私は今頃になってあたりをつける。そしてそれは恐らく遠からず当たっているはずだ。
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