今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
私が五歳の頃。

母が亡くなったのはその頃だ。私は本宅へと引き取られた。

『お前は、残り物だ。あの女の残りカスだ。余計なことはするな。何もせず、ただ息を吸って吐いていればいい』

初めて顔合わせをした公爵に言われたのはその言葉だった。私は何をいわれたのか最初理解出来なくて、続けて公爵に言われた時、胸が凍る気がした。

『あの女と共に死んでくれたらよかったのに。酷い母親だな、お前の母は。お前だけ残して、自分だけ楽になるのだから』

死んだ母を、自殺した母を。

楽になる、といった父ーーー。

あなたは、自分が母をそこまで追い込んだ自覚はなかったのか。私は悲しみと、苦しみ、衝撃に呑まれた。だけど弱冠五歳。何もできるはずがない。

そして、既にその頃には三歳になる義妹がいた。義妹は私と同じ金髪で、そして私とは違い翡翠色の瞳をしていた。私は母親の瞳の色を受け継ぎ、水晶のような色合いだった。父はそれが気に食わなかったらしい。髪色こそ父と同じだが、目は母と同じ。父にとっては疎ましがったのだろう。

私はひとり別邸へと押し込まれ、その生活は私が八歳になるまで続いた。約、三年間だ。
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