おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

ローランとシルヴィアから全て聞き終えたリサは一旦控えの間に寄り、シルヴィアの扮装を解いてからジルベールと2人でバラ園へ来た。

まだ足元がふわふわしている。この世界にやってきた初日以上に現実感のない話に、頭が追いついていない。

篝火が照らすいつものベンチに2人で座ると、ジルベールがメイド姿のリサの肩に脱いだ軍服を掛けてくれる。

「ありがとうございます」
「…黙っていて悪かった」

ジルベールは小さく頭を下げた。それに対しリサは首を横に振る。
まだ混乱していて話がうまく飲み込めていない。

「ローラン様は、最初からシルヴィア様を知っていたんですね」
「あぁ。平和会議でこの国が議長国になった8年前、兄は父と一緒に会議に出るため初めてこの国を訪れたらしい」
「ジルは一緒ではなかったんですか?」
「俺はその頃、騎士の養成士官学校に通っていた。兄が国を継ぐと疑いもしなかったから、あまりそういった会議には出てこなかった」
「じゃあ公爵様はローラン様のお顔を知っていたのでは?」
「兄が会議に出たのは15の時に1度きり。さすがの公爵も侍従姿をしていればわからないだろうと思ったんだ」

ジルベールは「これからは外交や執務ももっと学ばなくては」と独り言のように呟く。国へ帰ってからのことを考え奮い立った。リサを手に入れるためなら一旦剣を置き、苦手な執務にも真摯に取り組もうと心に誓う。

< 122 / 147 >

この作品をシェア

pagetop