おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

夢を見た。

今から7~8年は前のこと。
近隣諸国のトップを集めての平和会議が毎年冬に招集され、議長国は各国が持ち回りで行われる。その年はレスピナード公国で行われた。

参加国は、資源大国である南のアランブール王国、軍に力を入れている北のバシュラール皇国、開催国である東のレスピナード公国と、近隣で1番の領地と豊かさを誇るラヴァンディエ王国。

いつもは穏やかな公爵が真剣な面持ちで議会を取り仕切り、周りにも同じように怖い顔をした大人の男達が大勢城に詰めかけた。

当時リサとシルヴィアは9歳。
1人娘とはいえ社交の場にもまだ出ていないシルヴィアが会議に呼ばれるはずもなく、リサは彼女と共にちらちらと雪の舞う庭園で庭師が行うバラの剪定を飽きることなく見ていた。

『ねぇモーリス。覚えたら私にも出来ますか?』
『もちろん。やってみるかい?リサ』

バラを育て綺麗に花を咲かせるには、葉を落としているこの冬の季節に花がつきやすいように準備をする必要がある。

この城に仕えて30年のベテラン庭師のモーリスは穏やかに頷いてみせると、リサに剪定のやり方を簡単に教えてくれた。

リサはこの城に来て3度目の冬だった。他の使用人たちから色んな事を教わり、なんとか拾ってもらった恩を返そうと必死に役に立てるよう働いた。

モーリスに鋏を借り、秋までに育った枝の半分ほどでざっくりと剪定していく。

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