元カノが、彼女の隣に座りにいく。



ふーっとため息をついたあと、



「あっけなかったねー」



「ほんと、それ」



ふたりが話している周りでは、たくさんの人の叫び声が上がっていた。



だが、二人は気にすることなく雑談のように話を続けた。



「やっぱ、今、聞いてる叫び声の方がリアルだねぇ」



彼女は、ふふと笑いながら、



「当たり前でしょう。あんなドラマのシーン録音して流すなんて。所詮は作り物なんだし、リアルに勝てるわけないわよ」



「だねー、だからとりあえず今、録音してるの」



元カノが言葉を返す。





「えっと、それってまた誰か殺したいって思ってるのかなぁ?」



「だって、今カレの行動、あやしいんだもん。あいつも怪しいと思ってたから、予備を探したけど、なんか一緒みたい」





女性は呆れた表情で言う。



「あんたはほんとに、男運ないわ。男なんてどれも一緒。アクセサリーみたいな飾り。だから、なくなったらまた新しいのを見つけたらいいだけなのに」



「それはお姉ちゃんだから言えるんだって。わたしっていつも誰かに依存してないとダメー」



「双子なのに、ぜんぜん違うわね。わたしには理解できないね」



「お姉ちゃんがいいとこぜんぶ取っていったくせにー、一卵性って不公平!」



「はいはい、わかったわ。もしまたそうなったら手伝ってあげるよ」





姉である女性は、ふーっとため息をついて話を続けた。



「それより、今の瞬間って見てた?」



「あ、わたしはさすがに付き合った仲だからさー、かわいそうで見れなかった」



「そうね、たしかに元彼だった人だし。だったら話さないほうがいいか」



「えー、気になるじゃん、教えてよ!」





姉はゆっくりとホームの先を指でさした。



「あなたのスマホ、あそこ」



「え? スマホ、無事だったんだー、ラッキー!」



そこにはさっき、元カノが掴んだおれの右手が転がっていた。



その手の中にスマホがあった。



まだ人差し指が痙攣したようにピクピクと動いてる。



「うわっ、あれはさすがに怖いって。むりー、お姉ちゃん取ってきてー」



「はいはい」



姉は立ち上がって歩いていき、その場にしゃがむ。



それから平然と右手の指を開いて、スマホを自分の手に取った。



「さっすがー、って、怖くないの?」



「死んだ身体って、しばらく動くことってあることなの。生命力って強いよね」



といった瞬間、開かれた右手が彼女の顔を目がけて飛びついた。





「ギャーっ」



右手は生き物のように彼女に向けて飛びかかり、その指が彼女の顔面に突き刺さっていく。



「だ、だれかー!」



元カノが助けを呼ぶ。



この顔のせいでおれは殺されたんだ。



そして、また誰かを殺そうとしている。



この顔に騙されたおれは死んで罰を受けた。



次はお前たちがおれを殺した罰を受ける番。





彼女の顔を掴む右手の力は怒りでさらに増していく。



お前は傷だらけになった醜い顔でこれから罰を受けて生きていきなよ。



と言っても、これからは闇の世界が待ってるし外見は関係ないか、残念。



元カノには、、、ま、特にもう何かする必要ないだろ。



お前には、そのうち警察が捕まえに来てくれる。



さっき、お前のスマホから友人にLINEを送っておいたよ、



「元カレを殺した、復讐成功」ってな。





さて、そろそろ意識の限界か。



右手の力は弱くなっていき、その場に落ちた。



姉である女性の顔が現れた。



両頬にえぐられたような穴が空いていた。



両目には指が突き刺さったせいで、眼球が潰れて半分垂れ下がっていた。



顔の所々に血が垂れていた。



特に目元からの流血はひどく、目から真っ赤な涙が流れているように見えた。



数分前の美しさの面影はもうどこにもなかった。



元カノがハンカチを取り出して姉の顔を必死で抑え、泣きながら救いを求めていた。





(ふたりとも死なせはしない。生きて苦しめ。その人生、ずっと見ててやるからな)



おれは死んであの世が待っている。



元カノは警察に捕まって刑務所が待っている。



そして、彼女には闇に閉ざされた毎日が待っている。



一体、誰の人生が一番不幸なのだろうか、、、



ふと思いながら、おれの意識はこの世から消えていった。

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