HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
夜勤勤務明けの看護師から日勤勤務の私達への申し送りから一日が始まる。

申し送りが終わった直後から、点滴や投薬の準備に入る。
朝の喧騒の最中、外資系製薬会社『ジーザス・ジャパン』のMR の久世匠海(クゼタクミ)さんが薬剤の納品にナーススーテションへと姿を見せた。

「おはようございます。『ジーザス』の久世です」

低く響き渡るテノールボイスに軽くパーマをかけ、ワックスで軽く毛先を弄ばせ、セットした黒髪。
紅茶色の薄い虹彩を見せる切れ長の瞳。
笑うと少し目尻が下がる。
長身に端正な顔立ち、そして国立の横浜薬大卒の彼。
彼は私が見ていた若い頃の隼也さんに似ていた。

そのせいか、私は彼をひと目見た時から、目が離せなくなっていた。

でも、彼は大人気で、常に他の看護師たちに囲まれていた。

彼を射止めたのが、同じ病棟ナースとして働く一年先輩の村上梓(ムラカミアズサ)さん。

彼女の主催で、久世さんの大学の同級生たちと合コン。
でも、私は一お目当ての彼とはお近づきにはなれなかった。
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