HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
仙波さんの要請で、槇村が慌てて処置室に飛び込んで来た。

「高木先生!!」

「槇村…まだ居たのか?」

「まぁね…瑞希ちゃんとランチしてた」
と呑気に返しながらも、次の瞬間、顔を引き締めて彼女を診た。

「抗生剤の投与を終えた…」

「そう…彼女のカルテ見せて…」

仙波さんが彼女のカルテを槇村に見せた。

「妊娠十八週か…でも、クラミジアの検査とかは終えてるね…東亜医科大付属病院の産科医・槇村です・・・」

慣れた所作で、内診を始める。
月が満ちる前に破水すれば、早産でも覚悟をして赤ちゃんを出すしかない。
でも、赤ちゃんが体外で生存できる限界の二十二週までは四週間あった。
ほとんど場合、このケースは妊娠人口中絶となる。


「先生、赤ちゃんを助けて下さい…私と隆文君の赤ちゃんを…」

彼女は涙ながらに訴える。

俺の心に響き渡る彼女の言葉。

「槇村…俺からも頼むっ!!何か方法はないか??」

「ないワケではない。でも、ここでは無理だな…『東亜』に搬送しよう」

槇村の考えた方法は陣痛と感染症を薬で抑えながら、「人口羊水」を注射針で子宮に注入する治療方法。その方法で赤ちゃんが体外で生きられる二十二週目まで、妊娠継続させる。
槇村がそのまま、彼女と共に救急車に乗り込んで、「東亜」へと向かう。



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