運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
そして、大きく深呼吸をしてからありったけの感情を押し殺して、顔を上げる。

その顔には笑顔を浮かべている。


今の俺にしてやれることはこれしかない。
もうこれしか残されていないんだ。

「綾乃。今までありがとう。」
じっと悟を見つめる綾乃。

「別れよう。」
綾乃が苦しくないようにと微笑みながら告げる悟。

何よりも言いたくなかった言葉に、のどの奥がギュッと苦しくなった。
それでも微笑みを消さない。
今の俺にできることはこれしかないんだと言い聞かせながら微笑み続けた。
< 288 / 349 >

この作品をシェア

pagetop