訳アリなの、ごめんなさい
3章
結婚式の荘厳な音楽を、王太子妃のために用意された支度部屋で聞く。

式は滞りなく進んでいるようだ。


王都は数日前からお祭り騒ぎのようで。朝からこの大聖堂の周りにも祝辞を述べたい市民で賑やかだ。そんな喧騒も耳に入れながら、ぼんやりと今朝の妃殿下の姿を思い出す。


「これほどに暖かい民達のためにも、私は報いねばならぬわね」

朝一番の歓声をこの場で聞いた彼女はそう呟いて目を伏せていた。



本当であれば、同じ頃、祖国の民に祝福されて好いた殿方の横で純白のドレスを着るはずだっ彼女は、思いがけず異国の王太子に引き裂かれ、彼に嫁ぐことになった。

そんな彼女にこの歓声は身を縛り付ける縄のように感じたのかもしれない。

本当の意味でもう後戻りはできないと。

王族貴族に生まれたからには仕方がない事ではある。多くの女性が家や国家のために好きでもない男の元に嫁ぐ。

それが当たり前と思っていても、一度は好いた相手と一緒になる事を思い描いてしまえば、それは余計に辛い。


むしろ、残酷だ。


同じ経験があるからこそ、彼女の気持ちは痛いように分かって、せめて少しでも彼女の力になれたらと、目を閉じる。


鐘が盛大に鳴り響く。


あぁ、これでもう
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