燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
8章:彼の気持ちと私の気持ち


 先生の目、いつもと違って薄暗くて怖い。
 それを見て、背中がやけに冷たくなって、まだ自分が小さく震えているのがわかった。

 これが本当の先生?
 でも……。


「……先生は最初、私が目覚めた時、『全部思い出させてあげる』って言ってましたよね」
「うん。最初、事故は眠っている時は、もうそんなこと思い出さないでほしいって思った。だからメモを残した。でも、つばめと話していると……3か月間のつばめのことも思い出して……。やっぱりあの夜のこと以外思い出してくれればうれしいって、都合のいい事考えちゃったんだ」

 酷い男だよね、と自嘲気味に笑う先生は、いつもの様子と違ったけど。
 やっぱり3か月間の私との思い出も大事にしていたことがよくわかった。

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