丸重城の人々~前編~
怖いなんて、感情はなかった。
ただ、大翔がほしい━━━━━
その感情だけに包まれていた。
けっして上手くない柚希のキス。
それでも夢中で、大翔の口唇を貪る。

「んぁ…柚…?」
「はぁはぁ………」
涙はとっくに溢れていて、大翔の顔にたくさん落ちていた。
「好きなの…大翔」
「うん…」
大翔が柚希を見上げ、涙を手で拭う。
その大きな手を掴んだ柚希は、その手にキスをした。
「大翔がほしいの……」
「ゆ、ず…?」
「お願い…拒まないで………?」


「…なんだよ……それ…」
「え━━━」
そのまま今度は大翔に組み敷かれる、柚希。
「反則だろ……」
「大翔?」
「なんで……大事にさせてくんないの?」
「あの…ごめんなさ……」
「ちげーよ!」
「大、翔?」
「せっかく大切に少しずつ癒してこうと思ってんのに、台無しだ……。
柚希が悪いんだからな……。こんなに煽って……。
震えても、止めねぇから…!」
「うん…嬉しい!早く愛し合いたい…!」
「だから!煽るな!」
大翔の目を見る。
忠司と少し重なる。
でも、不思議と震えは感じなかった。
「あんま、見るな…ハズイ……」
大翔と見上げ、その綺麗な目に触れる。
「好き…」
柚希の小さな声。
でもしっかり大翔には届いていた。
「煽るなって!」
そう言うと、今度は大翔が柚希の口唇を貪った。
激しいキスをしながら、大翔の手が柚希のパジャマのボタンにかかる。

あっ━━━━!
下着!?
「ちょっと待って!!!」
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