丸重城の人々~前編~
「柚…離して?重いだろ?潰してしまう……」
「嫌!大翔の重み、なんか心地いいから…」
「でも…苦しそう……柚」
「一秒も…離れたくないの……」

今になって、身体が震えてくる。
どうして…?
どうして、忠司くんが出てくるの…??

【柚希…俺が幸せにするよ?だから、ここから出したくない…!】
彼がよく言っていた言葉。
いつも抱かれた後に言う言葉だ。

「柚?」
「私…大翔が“一緒に幸せになろう”って言ってくれたこと、とっても嬉しかった。
大翔は“一緒に愛し合おう”って言うでしょ?
“一緒に”ってそれが嬉しい!」
「あぁ」
「今までそんな風に言われたことなかったの。だから、嬉しい!
大翔…ずっと一緒にいてね!
で、一緒に幸せになろうね!」
「あぁ。一緒にな!
柚、もう離して?ほんとに潰す……」
「フフ…わかった!」
そして柚希から下り、横になる。
腕枕をして、抱き締めた。

「フフ…」
「何?」
「大翔…カッコいい……」
大翔の頬に触れる、柚希。
「柚…可愛い……」
柚希の頭を撫でる、大翔。
「もう……寝よ?柚」
「もう少し話、したい……」
「でも眠そうだぜ…?」
「お願い…もっと大翔を見てたい…!」
「わかった…」
「なんかしゃべって?」
「ん?」
「声…聞きたい……大翔の声、好き……」
「…って言われてもな………」
「じゃあ……私の、名前…呼ん…で?」
「柚…」
「大翔……」
「柚……」
「やま…」
「柚…?
寝たか…。
おやすみ……柚」
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