森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 残念ながら、その馬車に乗っていたのは可憐なお姫様ではなかった。

「さぁ、エディ。行くわよぉぉ」

 馬車の窓から、リディアがブンブンと腕を振っていた。

 ニコニコと無邪気に、彼女は笑っている。

 心なしか、いつもより可愛らしいワンピースを着ているようだ。

(醜男だって決めつけていたわりに、着飾っているじゃないか……)

 いつもは飾り気のないワンピースを着ているのだが、今日は首都に行くということもあってか、伝統衣装を着ている。白地に色とりどりの刺繍があしらわれたそれは、遠目からでも目立ちそうだ。

 朝から念入りに手入れしたのか、長い髪はしっとりツヤツヤしている。

 まるで別人──とまではいかないが、いいところのお嬢様くらいに見えなくもない。
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