愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
こんなことをして何になるというのだ。知りたいことがあるなら直接本人に聞けばいいのに。
自問自答しながらも、私は衝動が止められなかった。

日下さんは七階建てのマンションへ入っていった。見た目だけでは単身用なのかファミリー用なのかわからず、私は入口の自動ドアからこっそり中を覗き見る。しっかり閉まったのを見計らってから、ゆっくりと中へ入った。

奥にあるエレベーターの階数をすぐさま確認する。すると、一階で止まったままになっていた。

あれ?
動いていない。
どこに行ったんだろう。
一階に住んでいるのかな?

一階の部屋も確認しようと振り向くと日下さんが立っていて、驚きのあまり息が止まった。

「どうしたの?」

「あ、いえ、その。」

「ずっと俺をつけてたみたいだけど、どうして?何か俺に用事だった?」

「いや、えっと、ご、ごめんなさい。日下さんのこと、知りたくて、つい。」

「俺のこと?知りたいの?」

ジリジリと詰め寄られ、それに合わせて後退りをするも、壁を背に行き場をなくした。壁ドン状態で逃げ場がなく、私は身を小さくする。
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