身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
身代わりでもいいほど愛しています
全身を包む心地よい温かさに引き込まれ、浮上途中だった意識が再び眠りの中に落ちて行く。
凛音は寝心地抜群の布団の中で笑みを浮かべ身じろいだ。
「凛音、スイーツを食べてる夢でも見てるのか? 俺が用意した朝食もなかなかだぞ。早く起きろ」
「ん……」
愛しい声が耳元に響き、凛音は眠りに戻りかけていた意識を呼び戻す。
「今日は来客があるから早く出勤するんじゃないのか?」
「早く出勤……?」
耳をくすぐる声とともに目元には柔らかな刺激。凛音は目を開いた。
「そうだった。今日は忙しいから早く出勤するつもりで寝た……のに」
まどろみから覚めやらぬ口調でつぶやいた言葉は、そこで途切れる。
目の前には整いすぎた柊吾のキレイな顔。
目元に感じた刺激は彼の唇だった。
凛音のまぶたや頬を味わうかのように小さな動きを繰り返している。
「あ……」
徐々に状況を理解し、凛音はハッとした。
「ん? どうした?」
柊吾はうつ伏せの凛音の頬にかかる髪を慣れた手つきで梳き、楽しげに問いかけた。
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