37℃のグラビティ
走って……走って……走って……


肩で息をしながら、徐々にその足を止める。


アタシはバッグの中から、スマホを取り出すと、躊躇する事もなく、登録メモリから、寛樹と梓を削除した。


登録外からは、電話が繋がらないアタシのスマホ。


本当はスマホごと捨ててしまいたい気分だったけど、そうもいかないから……


着信・発信履歴を一括削除して、LINEのトークを読み返す事もなく、削除した後に、ブロックした。


それが、言葉にして言えなかった『サヨナラ』の代わり。


歩き出したタイミングで。


知らず知らず目の下に溜まっていた涙が、大粒の滴となってこぼれ落ちた。


泣きたいわけじゃないのに……泣きたくなんかないのに……


歩調と同じリズムで、ポロポロ…ポロ……ポロ……


アタシは涙を拭う事もせず、もう見る事はない景色の中、まっすぐ前を向いて歩いた。


そして心の中、何度も繰り返す同じフレーズ。


SAYONARA …………
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