若女将の見初められ婚
プロローグ

厳かに雅楽の音が聞こえ、しずしずと歩みを進める。

式場を出て、境内に出ると眩しいくらいの新緑が出迎えてくれた。

神社の庭は玉砂利なので、足を取られないように気をつけないと…

足元を気にしながら歩くと、どうしても俯き加減の姿勢になってしまう。

「志乃、白無垢が綺麗に見えるように歩いて」

チラッと振り返り小さな声で言うのは、今日から私の旦那様になる人、岩倉 仁(いわくら しのぶ)さんだ。

「慣れてないから歩きにくくて。がんばるけど」小声で返す。

遠巻きに見ている観光客から、おめでとう!や、まぁ!キレイなどと言う声が聞こえ、必死でにこやかな表情を作る。

『今はウェディングドレスが主流だけど、和装の結婚式も素敵でしょ?』

ぜひ着物で結婚式を!と笑顔でアピールするも、見ている人々に伝わっているかどうか…


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