求められて、満たされた
4.胸奥
女子に興味が無かった訳じゃない。

一応、俺も男だし恋人が欲しいと思う事だってあった。

でも好きになれる人が出来なかった。

ただそれだけだ。

サッカー部だったという事もあって、運動は得意だった。

運動が出来る人は女子からのポイントが高いらしく、何度か告白もされた。

でも断った。

好きでも無い人と付き合う、という行為は俺には理解出来ず気付けば彼女いない歴イコール年齢という記録は21になっても続いていた。

大学生ともなると周りの連中は皆恋人が居たし、恋人が居ない連中は合コンなりなんなりをして恋人を作るのに励んでいた。

合コンには友人から誘われたりはするけれど、父さんの店の手伝いもあったし断った。

好きな人って多分無理やり作るものでもないんだろうなと思っていた。

きっとそのうち、好きになれる人が出来るだろう。

そしてもし好きになれる人が出来たらその時はストレートに想いを伝えようと思った。



「木下奈生です。」



父さんの店に新しくアルバイトに来た子。

一目惚れだったと思う。

大学にもそれなりに美人は居たし、可愛いって思う子だったら結構居たけれど恋に発展する事はなかった。

でも、どうしてか彼女を見た瞬間胸が騒いだ。

これが恋だということはすぐに分かった。

昔から人の感情とかには割と敏感で、だからか奈生ちゃんの笑顔を見た時、違和感を感じた。
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