希子(きこ)さんにお手伝いをさせてもらい、柚瑠木(ゆるぎ)さんの晩御飯の一品を作るようになって数日が経ちました。柚瑠木さんは相変わらずの無表情ですが、毎日残さず食べてくれています。
 いつも希子さんにメニューを考えてもらっていたので、これからは少しくらい自分も勉強しようと今日はお料理の本を買いに来たんです。

 エビ料理のあるレシピ本を数冊買って、近くの喫茶店に寄りました。普段は寄り道なんてしないけれど、今日はなんとなく自分へのご褒美が欲しかったのかもしれません。

 大好きなガトーショコラとカフェ・ラテを注文し、のんびりと外の景色を見ていました。

「すいませんお嬢さん、今の時間を教えてもらえないでしょうか?」

 声をかけられて顔を上げると、そこには背の高い年配の男性が立っていて……スッとそのまま私の隣の席に座られたのです。

「あの……時間でしたら、そこに壁掛け時計が……」

「貴女が二階堂 月菜(つきな)さんですね?貴女が私のお願いを聞いてくださるのなら、二階堂 柚瑠木さんの秘密を教えてあげましょうかーーーー?」

「ゆ、柚瑠木さんの秘密ですか……?」

 その言葉のすべてが私を騙すための罠だとも知らず、私は柚瑠木さんのことを知りたいあまり彼の言葉に頷いてしまったのでした。